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| 「一双」を選んだあなたには・・・ | 『はくちょう』 |
「はくちょう」という題名は、ちょっとズルイ。
それだけでもう、なんだか切ない気分にさせられてしまうではないか。
ナンセンスの代表作家、内田麟太郎さんと
叙情的な画家、伊勢英子さんという異色のコンビ作品。
題名と表紙を見ただけで、期待が高まる。
見開きは真っ白だった。
白鳥の「白」?
何も予感させないようにしているの?
そーっと、ページをめくってみる。
ものがたりは、何の前触れもなく、いきなりはじまっていた。
不意打ち。
これはかなりズルイ。
1ページ目から術中にハマッテしまったのを感じながら
ゆっくりとページをめくっていった。
情緒たっぷりのうつくしい絵が 胸をしめつける。
少ないことばが 切なさを倍増させる。
恋愛経験のないこどもは また違った受けとめ方をするのだろうが、
私は 閉じていた気持ちのフタを あけられてしまったような気持ちがした。
一途に相手を思いやる気持ち。
恋愛中の引き寄せられるような想いや切なさ.......。
結婚してこどもを産んだりすると
相手への愛は変わらなくとも、あの「切なさ」は、ほぼ消滅する。
いったいどこへいくのだろう?
背表紙から表紙へとつながる文字
「CYGNE CHANTEUR」
フランス語で「歌う白鳥」と書かれている。
この作品では、最後のひと声ではなく、愛のうたの意味だろう。
人間はことばを持って 気持ちがわかりあえるようになったというが
ほんとうだろうか?
ことばで傷つけあうことのほうが 多くなってきているのではないだろうか?
白く 細く 長い首から 絞りだすような声
「くうー」 「くうー」
このひと声でわかりあえる白鳥の方が
ずっとずっとスゴイ気がする。
飛べるもの と 飛べないもの
動 と 静
性格も 育った環境も まったく違うふたりには
大きな壁があるように思えた
でも、奇跡はおこる。
ことばが少ない分、感じ方はひとそれぞれだと思う。
私は、こころの深いところが揺さぶられた。
と同時に、まったく別の想いがあたまを駆け巡った。
「私の愛って、こんなにちっぽけなものだったんだ.....」
主張ばかりして
相手の気持ちで考えることが少なくなっていた自分に 気づいてしまったのだった。
なんだか情けなくて 涙がでた。
作品の余韻とともに、触発された想いを抱え、
私は、しばらくぼんやりと 愛について考えていた。
内田麟太郎さんのことばは、マジメモード。
でも文章だけに注目すると、いつもの独特のナンセンスも交じっている。
伊勢英子さんの魂を込めた絵を組み合わせることによって
純粋さが強調され、ドラマティックな作品になっていると思う。
これが別の画家だったら きっとこの世界は生まれなかっただろう。
1枚1枚キャンバスに描かれた絵は貴重だ。
どの場面を額縁に入れて飾ってもいいようなすばらしい絵だ。
価値ある1冊。
愛するひとへ贈りたい。
2003.9.21
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『はくちょう』 |
| 内田麟太郎(文)/いせひでこ(絵) | |
| 2003年7月25日発行/講談社 | |
| 31p/サイズ25×25cm |