<< TOP  < BACK                                絵本旅行社・ありがとう・キネンビ・黒猫No.19-3


黒猫の秘密


● ? ●

 



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 数日後、

おじさんと目が合ってしまった時、

我輩は猫であることを忘れ、

突然

おじさんに話し掛けてしまったのです。



おじさんは、何事が起きたのか解らず、

目をクリクリさせましたが、

それも一瞬だけでした。



すぐに元の様子で、

さもあたりまえの様に穏やかに話しを聞いてくれました。








「我輩は猫だけど、

猫の生活には満足出来ないのです、

解らないけど何かが足りないのです。



 猫の生活は自由で楽しいけど、虚しさを感じるんです。

どうすればよいでしょうか?」








「猫で在りながら、

その様に考える様になってしまった事は

猫さんにとって悲劇ですね。



 何かが足りないその何かとは何でしょうね

夢ですかね、

猫さんには夢が有りますか?」








「悲しいかな猫には

夢を描くだけの知識がないのです。

思い浮かべる事すら出来ません




虚しさを感じるのはなぜでしょう。

ひとりぽっちで時を過ごして、

その時、その瞬間の

 生きていると言う時間を共有する

仲間がいないからでしょうか。




 夢に向かって

今日一日充実して過ごせたと言う

満足感がない事なのでしょうか」








「それなら夢家で一緒に暮らし、

夢を探してみませんか、

本をいっぱい読めば、

きっと見つかりますよ。



 閉店後は

どの本を読んでもかまいませんよ。

次の朝までに

元の本箱に返しておけば、いいですよ」








 早速その日から、

我輩はお言葉に甘え

夢家の居候となった次第です。




毎夜閉店後、

店奥の狭い居間で読書です。




この部屋の照明は昔ながらの裸電球です。

おじさんが言うには、

この方が蛍光灯より、

温かみが感じられるので好きなのだそうです。

我輩も同感です。








今晩もテーブルを挟んで向いでは、

おじさんがねじり鉢巻で、

おじさんなりの夢に向かって

今日も一行からと文章をひねり出しています。





 一人と一匹は

決して同じ事はしていないのですが、

我輩はおじさんと同じ時間の場に存在し、

生きていると実感出来る事に、

又、未だ夢は見つかっておりませんが、

見つけようする努力が出来る事に

満足しております。






 そうそう、





おじさんが、

<無知の知>を理解している猫にはこれが良いだろうと、

ソクラテスと名前をつけてくれました。




最後になりましたが、



我輩の名前はソクラテス。






職業は現在


『古本屋 夢家』の居候です





                          by 眞保 新平



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