黒猫の秘密 ![]() ● ? ● |
| 1 『 ふとした、ことから 』 我輩はちょっと前までノラでした。 かつて、何人かの人間に飼われ、 そのつど勝手な名前を付けられました。 我輩にとっては気にいらない名前ばかりでした。 猫の我輩も勝手ですが、人間の飼い主はもっと勝手でした。 飼い主の勝手が我輩の我慢の限界を超えると、 すぐ飼い主のところを飛び出し ノラ猫となり そのつど名前は捨ててきました。 猫の我輩にとって ノラ猫社会で生きる事に満足すれば一番良いのでしょうが、 ノラ猫社会でしばらく一匹で自由を満喫するとなぜか、 人間社会が人恋しくなるのです。 我輩にもよく解らないのですが、 猫社会での過ぎゆく時間に、 なにかもの足りなさを感じ、 なにか虚しさを覚えるのです。 このまま時がすぎ、 何もせず老いて行く事に。 今まで関わった人間は身勝手で好きにはなれなかったけど 人間社会には猫社会にはない、 何かが在るように思えるのです。 我輩の現テリトリー内に有る 『古本屋 夢家』の軒先で昼寝をしている時、 何気なく聞いてしまったのです。 店主と不登校の小学生の会話を。 「おじさん ぼく学校はきらいで行けないんだ、 でも、おじさんのお店はだいすき。 山のようにつまれた本の中から宝ものがでてくるよ、 ほらこれだよ。」 手にしているのは、一冊の美術書だった。 「ぼく絵描きさんになりたい、なれるかな? どうすればなれる?」 「なれるともさ かんたんさ! 毎日、紙をひろげ、 『ぼくは絵描きだ』 と声を出し、 先ず自分に魔法をかける、 そして紙に絵を描く、これだけ。 ただしこれを毎日毎日続けないといけない。 やめた時点で魔法の力が無くなり、 絵描きさんに成れる道が、消えてしまうよ」 小学生に向い真剣に 「なれるともさ かんたんさ!」 と言い切ってしまうこのおじさんは何者、と興味覚えました。 1 2 3 |
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