「きのうも、うさぎ一家のとうさんがトロルにやられたんだって!
ふくろうおじさん、知ってた?」
「あー、知ってるともさ、かわいそうに!
次はお前さんかもしれないよ」
と、隣りの山羊さんに言った。
「冗談言わないでくれよ、ふくろうおじさん、
この森の住人は誰だって危ないんだから」
「憎いし怖いよ、トロルほど卑怯者はいない!
くらやみにまぎれ襲って来るんだものね。
きつねさんもそう思うだろ?」
「まったくそう思うよ。野ねずみさん、みなさんはどうですか?」
「わたしもそう思う」
「おいらもそう思うよ」
と、野豚、イタチ、野鳩、鹿と集まった皆が口を揃えて言った。
森は大騒ぎ、
新月になると、
毎回毎回くらやみの中、だれかが犠牲になっていたのです。
「このままだと次の新月のくらやみの日に、
また、だれかがやられてしまうよ。
なんとかしなければ!」
とふくろうじいさん。
みんな口をそろえて、
「そうだ、そうだ。なんとかしなければ!」
みんなで意見を出し合いましたが、
なかなか良い方法は見つかりません。
今回犠牲となった、うさぎ一家の長男、ピーターが、
「くらやみの時だけ、襲って来るのだから、
くらやみをなくせばいいんだ!」
森の仲間は口ぐちに、
「どうやって?」
「どうすれば……」
「それができればな……」
言い出しっぺのピーターは、決心した様に
「ぼくが、お月さまに『まっくらにしないで』とたのんでくるよ」
満月の日、
ピーターは、
やっとの思いでお月さまに願いを聞いてもらえる場所に辿り着き、
仲間の願いを伝えましたが、お月さまは、
「月が満ち、月が欠けるという自然の法則は変える事は出来ません。
しかし、わたしの分身をさずけよう」
気がつくと、
ピーターの手にはひとかけらの光った物が入っている
ランプがぶらさがっておりました。
急いで、森へと引き返し、
仲間に見せ、いきさつを話しました。
そして、みんなが集まる広場の高い木にぶらさげ、
毎夜、不思議なそのひかりを眺めました。
満月から新月になるにつけ、
不思議な事に、その光は増し、
新月の夜、その光は森の仲間が集まっている広場の隅々まで、
明るく照らしだしておりました。
暗闇からトロルは森の仲間を狙っているのですが、
ランプの光の明るさで、もう手出し出来なくなりました。
みんなの森は、もとの平和な森に戻りました。
うさぎは、この時よりお月さまに感謝を込め、
満月を見ては飛びはね、踊るようになったのです。
森の仲間は、ピーターに
「ありがとう!」
「ありがとうね」
「ありが……」
「Zzz……」
「トム、また、うたた寝っ! 風邪ひきますよー!」
とママの声でおこされた。
眠気まなこで、すぐには寝ているのやら、
起きているのやら解らない。
でも興奮していた。
「ママ、今、すごいもの見たよ。
トロルが襲ってくるの!
どうぶつたちが相談するの!
お月さんとお話するの!
月のランプが段々明るくなるの!」
ピーターがしたことをいかにも自分がしてきたように、
いっきに勢いよく続けざまにしゃべった。
「それはすごいわね、それでどうなったの」
「ぼくがみんなを助けたんだよ!」
「そう、それはよかったわね! ママはトムがうらやましいな!」
「どうして?」
「だって、ママも子どもだったころ、
絵本の中のお月さまや、山羊さんや、ふくろう
さんや、うさぎさんとお話が出来たのに、
最近では、すっかり出来なくなっているのよ」
「じゃ、ぼくがお話をして来て、ママに聞かせてあげるよ」
「お願いね」
「うん、わかった」
「じゃ、ベッドに入って寝ましょう」
「はーい」
「もう一度どうぶつたちに会えるといいね」
机の上には、トムが読んでいた絵本が残っていました。
by 眞保新平
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