<< TOP  < BACK                               絵本旅行社・ありがとう・キネンビ・少年No.7


少年の秘密


● サム ●

 


 
サムは、ごく普通の男の子です。

学校に行ったり、友達と遊んだり、

妹や弟の面倒を見て過ごしています。



サムの一番のお気に入りの場所は、

父さんが庭の木のてっぺんに作ってくれた小さな部屋です。

サムは、家族が寝静まるとこっそりベッドから抜け出して、

小部屋にのぼります。

そしてそこに三日月の描かれたランプを持ち込み、

内側からドアにかぎをかけて、図書館で借りた本を読みます。



それは、深い海の底の沈没船にまつわる物語だったり、

見知らぬ国の王子と竜の戦いの物語だったりします。

でも、サムはまだ子どもですから、夜更かしは苦手です。

いつも決まって読みながら眠ってしまうのです。

そして、決まってお話の主人公になった夢を見ます。



夢の中で、サムは沈没する船の勇敢な船長になるときもあれば、

竜退治に出かける美男子の王子になるときもあります。

サムは、昼間は小さな男の子だけれど、

夜には知恵にあふれ、心優しく、とびきり強い英雄になれるのです。





ところで、

サムにはひとつ、不思議で仕方ないことがあります。

夜、小部屋の机につっぷして寝入ってしまうのに、

朝目が覚めるのは、いつも自分の暖かいベッドの中なのです。

サムが聞いても、父さんも母さんも、「さあね」と言うばかり。

こうなったら夜中に何が起こるか自分で確かめるしかありません。

でも、残念なことにサムは夜更かしが苦手なのです。

当分、サムの疑問は解けないことでしょう。






                                
by 内藤由紀




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