サムは、ごく普通の男の子です。
学校に行ったり、友達と遊んだり、
妹や弟の面倒を見て過ごしています。
サムの一番のお気に入りの場所は、
父さんが庭の木のてっぺんに作ってくれた小さな部屋です。
サムは、家族が寝静まるとこっそりベッドから抜け出して、
小部屋にのぼります。
そしてそこに三日月の描かれたランプを持ち込み、
内側からドアにかぎをかけて、図書館で借りた本を読みます。
それは、深い海の底の沈没船にまつわる物語だったり、
見知らぬ国の王子と竜の戦いの物語だったりします。
でも、サムはまだ子どもですから、夜更かしは苦手です。
いつも決まって読みながら眠ってしまうのです。
そして、決まってお話の主人公になった夢を見ます。
夢の中で、サムは沈没する船の勇敢な船長になるときもあれば、
竜退治に出かける美男子の王子になるときもあります。
サムは、昼間は小さな男の子だけれど、
夜には知恵にあふれ、心優しく、とびきり強い英雄になれるのです。
ところで、
サムにはひとつ、不思議で仕方ないことがあります。
夜、小部屋の机につっぷして寝入ってしまうのに、
朝目が覚めるのは、いつも自分の暖かいベッドの中なのです。
サムが聞いても、父さんも母さんも、「さあね」と言うばかり。
こうなったら夜中に何が起こるか自分で確かめるしかありません。
でも、残念なことにサムは夜更かしが苦手なのです。
当分、サムの疑問は解けないことでしょう。
by 内藤由紀
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