<< TOP  < BACK                                絵本旅行社・ありがとう・キネンビ・少年No.1


少年の秘密


● ジェイク ●

 


 
夜の下でわたしは一本の木を見上げていた。
真っ白な星空に浮かび上がるその木はとても大きくて、
わたしは思わずため息をついた。

はじめは 暗くてよくわからなかったのだが、
幹の向こう側に はしごがかけてあるのに ふと気がついた。
上にはいったい何があるのだろう。
わくわくとしながら、わたしははしご段に手をかけた。


長い長いはしごの先が 明るくなっている。
登っていくにつれて、はしごの先が穴の中に通じていて、
その穴から光がもれているとわかった。
はしごを登りきって穴から顔を出すと、
そこはどこかの部屋だった。

すべてが木でできていて、
こぢんまりとした、
居心地のよさそうな部屋だ。
その小さな部屋には不釣合いなくらいに大きな机があった。


穴からはい出して立ち上がってみると、
すきとおるような金髪と白い肌をした少年が
机にうつぶせて眠っていた。
わたしは黙って少年を見下ろしていたが、
わたしの気配に気がついたのらしい。
少年は目を開けて むっくりと身を起こすと
「こんばんは」と言った。




「星を見に来たんだね」

「星を見るって」

「あれ。するとここははじめてかな」




わたしがうなづくと、少年はちょっと居住まいを正してから




「『星空の門』にようこそ。ぼくは星守(ほしもり)のジェイク」




と 言った。




「この世界のすべてのいきものは、みんな自分の星を持っているんだ。

星の中には思い出が詰まっている。

思い出は人間だけのものじゃなくて、

いきものみんなが思い出を持っているんだよ。

その思い出の詰まっ た星を守るのがぼくの仕事というわけ」



初めてここに来るものには、
いつもこうやってあいさつしているのだろうな。
よどみなく一気に言ってしまうと、ジェイクは高い鼻をひくひくさせた。
自慢したい気持ちはよくわかる。
確かに立派な仕事だもの。




「せっかく来たんだから、自分の星を見てきてごらんよ。

きっとなつか しいものがいっぱい入っていると思うよ」



ジェイクは机の上から金色の鍵をとって、
自分の後ろにある扉を開けた。

ぎぃ、と開いた扉の向こうに、
さっき見上げていたのと同じ、真っ白な星空が見えた。




「自分の星がどこにあるか、すぐにわかるだろうか」

「それはだいじょうぶ」




扉の前に立つと、頭の中で「こっちこっち」と呼ぶ声がした。
その声に 導かれて、わたしは星空に一歩踏み出した。




「夜明けまでには帰ってきてね。明るくなると扉が見えなくなるから。

それじゃあ、おやすみなさい」




さっきと同じように机にうつぶしたジェイクを見ていて、
わたしは ちょっといじわるを言いたくなった。



「星を守っているのに、きみはここで寝てばっかりいるのかい」



するとジェイクはちょっと顔を上げて、
「なに言ってるの」 と笑った。




「夜は眠るものだよ。 あなただってそうでしょ」





                                
by Michael




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