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シロクマたちの秘密


シ ョ ー ト ス ト ー リ ー
● 「Happy bears」 ●





『シ・ロ・ク・マ』が私のところにやって来たのは、
私が3歳の時。
パパが、海外出張のおみやげに買って来てくれたのです。

箱には「Happy bears」と書かれていましたが、
当然、幼い私には何の事か解りませんでした。



一番小さなチビクマに、
次の小さなクマのきぐるみを着せ、
次に中くらいのきぐるみを着せ、
最後に一番大きなきぐるみを着せると、
1頭のクマになる仕様です。

又、
各々大きさの違う4頭のクマとしても使用出来ます。
まさに
マトリョーシカ人形のぬいぐるみ版です。


手にした瞬間から私の宝物で、
毎日、ママゴトの主役です。
特に、
一番小さなチビクマ「マッキー」が、
お気に入りです。


春に生まれた小熊が、
秋の川で遡上している鮭を獲っているテレビニュースを見た時、
「マッキー」にも鮭をプレゼントしたいと駄々をこね、
ママに、赤いフエルトで鮭を作ってもらい、
赤い糸で縫いとめてもらいました。

その時ママが、
同じ赤い糸でチビクマの背に
「マッキー」と私の名前「マイコ」を刺してくれました。


可愛くて、楽しくて、毎日、毎日あそびました。

しかし、不意にその日が、やってきたのです。



「マッキー」がいません、
どこを探しても見つかりません。


誰かに誘拐されたか? 

「マッキー」が家出をしたのか?


何日も何日も探しましたが、見つかりませんでした。



主役の「マッキー」のいない『シ・ロ・ク』では、
やはり盛り上がりません。
いつのまにか、箱に戻され
私のおもちゃ箱に整理されたままとなりました。



『シ・ロ・ク』を手に取らなくなって18年。
今年は、私も大学を卒業し社会人となります。

気分一新の為、雑多な物を整理しよう!

思い切っておもちゃ箱も!

おもちゃ箱には、
懐かしい思い出のおもちゃがいっぱいです。

順次上から取ってゆくと
「マッキー」のいない
シロクマ「Happy bears」が顔を出しました。

箱に書かれた「Happy bears」の意味が解る今となって、
「Happy! Happy!?」
「マッキー」と、
はぐれた18年間を振り返ると
特に悪い人生でもなかったが、
又、
特筆すべき幸せも無く、平々凡々な幸せであったと思います。


「まっ、これでいいか!」

「そうだ、今度の日曜日のフリーマーケットに出してみよう!」


「マッキー」がいなくても、
だれか可愛がってくれる人が見つかるかも知れません。





当日は夜来の小雨も上がり、一転快晴。

会場の小間割りされた指定場所に行き、
まずは、向こう三軒両隣へごあいさつ。
両隣りはどちらもおばさん。

お向いは、
私より歳上に見えるイケメンではないが、
悪気のない第一印象で
好感が持てるお兄さんです。



「ヨロシクお願いします」

「こちらこそ! ヨロシク」

そして店開きは一斉に行います。



私のお店は商品が少ないので、
店開きの準備はすぐ終わり、
『シ・ロ・ク』を抱えたまま、お隣りのおばさんと話しながら、
みなさんがどんな商品を出されているのかと、
興味津々見渡している時、


お向かいのお兄さんが、

箱から出したクマに目が留まり、



「アッ! それは!! こんな事って有るの!」

と言いながら、

お兄さんの方へ駆け寄りました。



「アノ! アノー!! そのマッキー」

「エッ? ナニ?」

お兄さんはビックリした顔でした。



「マッキーを、 マッキーを」

「どうしてマッキーを知っているの?」

「だって、
そのマッキーは
この『シ・ロ・ク』の中の人だもの・・・」



興奮のあまり、夢中でクマでは無く、
「人」と言っていました。



「説明します、マッキーをかして下さい」



「マッキー」を手に取ると 『シ・ロ・ク』中へ入れ込み、
「これで、やっと『シ・ロ・ク・マ』に戻った!」

お兄さんは『シ・ロ・ク・マ』を眺め、
「マッキーの本来の姿はそうだったのか、
想像も出来ないね!

幼稚園の頃、
どうして僕の手元に来たかは解らないが、
手にした時には、
既に赤い糸でクマの背に
「マッキー」「マイコ」と刺して有ったので、
僕も母に頼み
「マッキー」「マイコ」の横に「ケンイチ」と刺してもらい、
このクマをマッキーと呼んでよく遊んでいたよ」



少し時間をおいて、お兄さんが気がついた様に、



「じゃあ、じゃあ、 あなたがマイコさん?!」





5年の月日が経ち、
春の光が差し込む縁側で、
3歳になった一人娘の「絢香」が
『シ・ロ・ク・マ』さんとママゴトです。


「マッキー」の背中には、
もちろん「アヤカ」の名前が追加されています。


ママゴトのお父さん役をしているのはパパです。
パパが真剣にお父さん役を演じれば演じる程、
お母さん役のおしゃまな娘に、パパはタジタジです。


そこで、
ママがダイニングキッチンより助け舟を出します。





「ケンイチさん、お茶が入りましたよ」





                                
by 眞保新平